🌲 クマ撃退法 ― 私たちが引いた境界線

出版告知

著:楠原 蒼生|TRB出版(Trend Research Books)

「撃退」とは、力で押し返すことではなく、
恐怖を理解へと変えることかもしれない。


🕊 はじめに

ニュースで流れる「クマ出没」の映像。
その背後には、森と人間の関係が静かに崩れていく現実があります。
『クマ撃退法 ― 私たちが引いた境界線』は、
その現実を“恐怖”ではなく“理解”から見つめ直す一冊です。

著者の楠原蒼生氏は、環境教育と社会心理を専門に学んだ作家。
本書では、クマ被害の実態を超えて、
「なぜ私たちは恐れるのか」「何を壊してきたのか」
という根源的な問いに迫ります。


🧭 作品の核心 ― “恐れ”と“境界線”の物語

タイトルの「撃退法」という言葉に、読者は一瞬ぎょっとするかもしれません。
しかし本書が描くのは、武器や暴力の話ではありません。
それは、“恐怖を知識に変える方法” です。

  • クマの行動原理と、人間の誤解
  • 「出てきた」のではなく「追い出してしまった」森の現実
  • 恐怖を煽る社会構造と、報道のあり方
  • 森の再生と人間社会の回復

ひとつひとつの章が、ニュースでは見えない「関係の再構築」を描きます。
そして読者は次第に気づくでしょう。
この物語の“撃退すべき相手”は、クマではなく人間の無関心であることに。


🌳 クマが教えてくれる「森の健康診断」

本書が秀逸なのは、クマという存在を
「森のバロメーター」として描いている点です。

森が痩せれば、クマは山を下りてくる。
つまり“クマが現れる”のは、森がSOSを出しているサイン。
「出没」ではなく「救難信号」なのです。

この視点の転換が、読者に深い気づきを与えます。
針葉樹と広葉樹の違い、土壌の呼吸、
人の生活と山のバランス――
環境教育の本としても優れた完成度を持つ一冊です。


💬 著者の言葉より

「恐怖をなくすことではなく、恐怖と上手につきあう方法を探したい。」
「撃退とは、壊さないための知恵のこと。」

楠原氏の文章は、静かでありながら力強い。
科学と哲学のあいだを行き来しながら、
“人間の在り方”を問うメッセージが貫かれています。


📖 読後に残るもの

読み終えたあと、心に残るのは「反省」でも「罪悪感」でもなく、
「次に何ができるだろう」 という小さな行動の芽。

それは木を植えることかもしれない。
子どもに森の話をすることかもしれない。
あるいは、ニュースを見たあとに一呼吸おくこと。

『クマ撃退法』は、
人と自然を隔てる“境界線”を描きながら、
同時にそれを越える“希望の橋”でもあります。


📗 書誌情報

  • 書名:クマ撃退法 ― 私たちが引いた境界線
  • 著者:楠原 蒼生
  • 発行:TRB出版(Trend Research Books)
  • 価格:¥500(Kindle版)
  • 発売日:2025年11月13日

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